登場して以来大きな話題を呼んでいる「ChatGPT(人工知能による対話型モデル)」ですが、教育分野でも議論の的となっております。
2023年7月には文部科学省が生成AIの利用について、小中高生向けのガイドラインを発表。学校教員や保護者の立場から子どもたちに対して、いかにChatGPTをはじめとしたAIツールとの向き合い方を伝えるべきか、議論が進んでいます。
そんな中で、中高生たち自身は、どのように考えているのでしょうか?
ChatGPTをどのように捉えているのか?使ったことはあるのか?また、大人たちからどのように教わっているのか?
2023年6月に実施した調査結果を、ご紹介したいと思います。
◆本調査の概要
調査対象 : 全国の「Studyplus」ユーザー(中学1年生~高校3年生)
回答者 : 1,657名
調査方法 : 学習管理アプリ「Studyplus」上でアンケート回答を依頼し、オンラインで回答を回収。
調査時期 : 2023年6月21日〜6月23日
①中高生のChatGPT認知率は約9割、一方でChatGPTを「よく理解できている」と回答したのは1割程度
ChatGPTの認知状況
まずはChatGPTをどの程度認知しているのか、探っていきます。
中学生は8割以上、高校生は9割以上が認知していました。
多くの中高生が、その存在を把握していることが分かります。
認知経路を確認すると、「SNS」きっかけが最も多く、約6割。
その後は「TVやラジオなどのメディア」「インターネットニュース」が続いており、いずれも約半数の回答を得ています。
多くの学生が認知していることはわかりましたが、どの程度調べて、理解しているのでしょうか。
ChatGPTについて調べた経験は、中学生は4割程度、高校生は6割弱があると回答しています。
理解度について「よく理解できている」と答えた割合は、中高生ともに1割程度にとどまりました。中学生は約半数、高校生は約4割が、「あまり理解できていない」または「全く理解できていない」という回答です。
②ChatGPTの日常利用は数パーセント程度、中学生は7割・高校生は半数以上が「利用したことはない」
ChatGPTの利用状況
中高生からも認知度の高いChatGPTですが、実際はどの程度利用されているのでしょうか?
日常的な利用は、中高生ともに1割を切っております。
また、「利用したことはない」が多数派であり、中学生は約7割、高校生は半数以上が「利用したことはない」と回答しました。
利用しない理由を尋ねたところ、以下のような結果を得ています。
「使い方がよくわからないから」「使うメリットがよくわからないから」といった回答が、上位を占めました。
では、利用している中高生はどのように利用し、どのような感想を抱いているでしょうか?
利用方法は「対話ボット」としてが最多。
利用目的は「調べ物や情報収集のため」が最多で約6割、続いて「話題になっていたので試しに利用した」という回答が多い結果となりました。
利用したうえで、メリット・デメリットをどう感じているか、確認していきます。
応答の速さや整理された回答について、6割がメリットだと回答しました。
一方のデメリットは、回答の不正確さを指摘する声が7割を超えました。
続いて、現在話題となっているChatGPTの勉強利用にフォーカスした質問をしました。
ChatGPT利用経験のある中高生のうち、約半数は勉強で利用した経験があると回答しました。
利用方法としては、「質問や疑問を解決するため」が最も多く、約8割。
「提出物の制作、もしくはその参考」が約4割という結果でした。
勉強活用に焦点を当てて、あらためてメリット・デメリットを確認していきます。
メリットとしては、「分かりやすい説明や解説を提供してくれる」が6割、「資料や情報の収集が効率的にできる」が半数という結果に。
デメリットは、全体と同様で情報の不正確性がトップとなりました。
「思ったような回答が返ってこない」という回答も4割存在しました。
③ 大人からChatGPTに関してレクチャーを受けた割合は2割
家庭・学校・塾などでのChatGPTに関するレクチャー状況
大人から子どもたちへ、いかにChatGPTやAIとの向き合い方・使い方を伝えるかは、盛んに議論が行われています。
現状、どの程度ChatGPTに関するレクチャーは行われているのでしょうか?
2023年6月時点では、中学生が14.1%、高校生が21.6%がレクチャーを受けたことがあると回答しました。7~8割は、レクチャーを受けたことがないということになります。
レクチャーを受けた場所、相手は以下の通りです。
場所は学校が最多、レクチャーをしたのは教師や講師が最多、という結果となりました。
具体的なレクチャー内容は以下の通り、利用方法や仕組みに関する説明が多くなっております。
レクチャーを受けた子どもたちの受け取り方は、以下の通りです。
大人のレクチャーによって理解を深め、興味関心が高まったという回答が多く得られる結果となりました。
④生徒会の公約作成や議論相手、プログラミングにChatGPTを活用する中高生たち
中高生のChatGPT活用事例
今回、アンケート調査に協力してくれた中高生の中から、ChatGPTの活用が特徴的だった3名にインタビューを行いました。
中高生の先端的な活用事例として、ご紹介します。
1. 埼玉県 高校2年生 男性 Mさん
男子校の生徒副会長
文系が強い国立大学志望
読書が趣味
Mさんは、テレビのニュースでChatGPTの存在を知り、面白そうだと感じてYouTubeなどで更なる調査を行い、実際に試してみました。
積極的に生徒会活動をしているMさんは、まずはExcelの資料作成の際にやりたい機能を実現するための方法をChatGPTに教わりました。また、生徒会長に立候補する際には公約作成に利用し「 生徒会長にならないとできないこと」などについて相談するなど、他の立候補者とは一味違ったクリエイティブな公約を提案できるようにしました。
また、勉強の場面では微分・積分の定数項が消える理由の説明を求めたり、自分で作成した英文を添削させて改善点のアドバイスを求めたりと有効に活用しています。
2. 沖縄県 高校3年生 女性 Sさん
国立大学の総合科学部志望
マンガ・アニメ好き
Sさんは、ChatGPTがTwitterで話題になっているのを見て利用し始めました。
社会学などの分野に関心の高いSさんは、ChatGPTを使って現在の世界規模の社会課題について議論している。例えば「環境問題・戦争・貧困のどれをまず無くすべきか?」についての議論や会話の相手としてChatGPTを用いています。
また、勉強のわからない部分を質問するのにも使ってみたが、正確な回答が帰ってこなかったのであまり活用していません。
3. 愛知県 高校2年生 男性 Dさん
国立大学の情報学部志望
1日7~8時間ネットは使うものの、SNSはあまり使わない
Dさんは、ChatGPTをネットニュースで知り、テレビで紹介されだした頃から利用しています。
小学生の頃からやっているゲームプログラミングにおいて、ChatGPTを使ってゲーム開発の為のAPIであるDirectXで用いるコードを生成することで、効率的に制作しています。
また、学業でもChatGPTを利用し、授業で理解できなかった部分を質問し、関連ワードなどについて調べていくことで理解を深めています。
まとめ
中高生はChatGPTに対して、SNSなどを通じて認知しているものの、まだ詳細な使い方やメリットは理解しきれておらず、それが利用経験率に表れているような結果となりました。大人からのレクチャーも2023年6月時点では、まだ十分ではなさそうです。
一方で、ChatGPTについて自発的に調べ、頻繁に活用するように中高生たちは、さまざまな目的・方法で使いこなしていることもわかりました。
現在最も必要なのは、ChatGPTやAIに対する理解を深めること。
その上で、どんな活用ができるかを、社会全体で考えていけると良いのかもしれません。
今回の結果も、社会の動向に応じて、変化していくことが予想されます。
Studyplusトレンド研究所では、学習管理アプリ「Studyplus」のユーザーである若者に向けて、定期的に調査を行っています。
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